減量について 〜脂肪燃焼期〜

試合前の選手向けに、減量方法をアーカイブしておこうと思います。

ここに記載される内容は、試合時の計量を通過しコンディション良く試合に望むことを目標にした方法なので一般的に言うダイエットとは少し意味合いが違ってくる場合もあるのでご注意ください。

まず、試合前の選手の体重管理については以下の期間に分けて考えます。

①脂肪燃焼期(〜試合1週間前まで)

②ドライアウト期(試合1週間前〜計量まで)

③リカバリー期(計量後〜試合まで)

当章ではまず、脂肪燃焼期についてお話していこうと思います。

この期間は名前の通り、体内の脂肪量を燃焼して減らしていく期間となります。

では、脂肪を減らすとはどういう事かと言う話ですが、よく一般の方に半身浴したら1キロ痩せた!とか、食べ放題に行ったら2キロ太った…などと仰る方がいます。

しかしこれは、一時的に後述するドライアウト(水抜き)が行われたり、塩分糖質の過多による浮腫がおこっただけで、厳密には脂肪の増減はさほど起こっていない場合がほとんどです。

そもそも、脂肪には1kgあたり7200Kcalのエネルギーがあります。これが消費された時に脂肪が1kg減ることになりますが、逆に言えば脂肪を1kg増やそうとすると7200kcalのエネルギーを摂取しなければいけないことになります。これはオニギリでいうと約40個分のカロリーとなりますので、なかなか1日で摂取しようと思うと難しい量だと思います。

それでは7200kcalを運動で消費してみようとしたとします。わかりやすい例で言うと、速度にもよりますがフルマラソン(42km)を走り切ると約2800kcalを消費します。つまり、体重を運動で1kg減らそうとするとフルマラソンを2.5回走る必要があるわけです。

これを多いと思うか少ないと思うかは人それぞれでしょうが、大半の方からすれば途方も無い運動量だと思われます。

ですので、脂肪を減らそうと思ったら運動以外のファクターも積極的に利用していく必要があります。

それが俗に言う「代謝」と呼ばれるものです。代謝と聞くと「基礎代謝」というワードを連想するかと思いますが、ここで重要なのは「活動代謝」と呼ばれるものです。

各代謝の意味ですが、基礎代謝が生命維持に必要なカロリー。活動代謝は基礎代謝に生活上消費される代謝や運動代謝を足したものになります。

活動代謝は以下のようなサイトから調べることができるので参考にしてみてください。 

https://keisan.casio.jp/exec/system/1567491116

効果的な脂肪減少とは、摂取カロリーを基礎代謝を下回らないように活動代謝以下に抑え、その差分を積み重ねていくことにあります。

分かりやすく例をあげると、基礎代謝が1300kcal、活動代謝が2000kcalの人がいたとします。その人が日々の摂取カロリーを1500kcalに抑えたとすると活動代謝との差分が500kcalになります。これを14日続けたとすると7000kcalの余剰となり、脂肪が1kg落ちるという計算になります。

これもよくありがちな事ですが、摂取カロリーを基礎代謝以下に抑えようとしてはいけません。基礎代謝はあくまで生命維持に最低限必要なカロリーとなりますので、それを割るような食事制限は単純にコンディションを落とし練習の質を下げます。

さらに人間にはホメオスタシスと呼ばれる体内の恒常性維持のシステムがあり、極端な低カロリーを続けると初期の段階では順調に減量できるかもしれませんが、ある程度続けるとそのカロリーで生命維持を行うために省エネモードになり極端に痩せ辛い状態になります。

この状態に入ってしまうと、身体が少しのエネルギーでも最大限吸収しようとする働いてしまうためリバウンドの原因にもなります。

さてそれでは摂取カロリーの減少、つまり食事制限の話に移っていきたいと思います。

最近の流行りとして、糖質制限ダイエットやケトジェニックダイエットなど、様々なダイエットが考案されていますし、私も様々実際に試したところ確かに脂肪減少という意味では効果は高いです。

しかし、導入でお話しした通り今目標にすべきは試合へのコンディションを落とさずに減量を行うということにあります。

私は食事制限を以下のような優先順位で進めております。

①食品を置換える。

②食品の量を減らす。

③食品を断つ。

下に進むに連れて脂肪減少効果は上がるかもしれませんが、運動パフォーマンスは落ちていくことになります。

糖質制限ダイエットもケトジェニックダイエットなども基本的には一定の食品を断つダイエット方なので、スポーツ選手が試合前に行う減量方としては正しくないと考えています。

そこで、まず第1に実践してほしいのが食事のバランスを整えることです。

人間は3大栄養素、すなわち「炭水化物」「タンパク質」「脂質」を主な栄養源とする生物であり、スポーツ選手の理想的な摂取バランスは6:2:2であると言われます。しかし現代の日本人は炭水化物、脂質の過多があり実際のバランスとしては7:0.5:2.5程度であると予測できます。

まずはそれらのバランスを改善するために炭水化物と脂質の摂取を控え、タンパク質の摂取を増やすように心がけましょう。

次に行ってほしいのは食品の置換えになります。

まず1日の摂取カロリーを計算することは前提ではありますが、多くの人は現在の体重から減りもしなければ増えもしない、という状態だと思います。これはつまり現状、活動代謝=摂取カロリーで釣り合っている状態であると言えます。

脂肪が増える主な栄養素としては炭水化物の場合が多いのでここでは炭水化物(主食)での置換えのお話をします。

私が行っている食品の具体例をあげると、

白米→玄米、蕎麦→サツマイモ、オートミール

というようにスライドさせていきます。これらはカロリーこそ大差ないとしても食品が持つGI値(血糖値の上がりやすさ)が大きく変わってきます。GI値が高いほど吸収が早く急激に血糖値が上がり結果としてインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンには急激に上がった血糖値を脂肪へと変換して体内に取り込む作用があるため、白米のようなGI値が高い食品の方が同じ炭水化物でも脂肪への変換率が高いということになります。

それに対して玄米などのGI値が低い食品は緩やかに消化されるため腹持ちが良く、血糖値の急激な上昇も起こらないた脂肪が付き辛いという特徴があります。

炭水化物以外にも、タンパク質摂取を脂身の多いバラ肉などから赤身肉、鶏ムネ肉、もしくは脂身の少ない魚などへ置換えることも有効になります。

また、どうしてもジュースを飲むことが辞められなかったり、お菓子を食べることが我慢できないという場合はゼロカロリー飲料等の人工甘味料食品への置き換えも検討してみてください。

いきなり特定の食品を断つというのは想像以上に身体的にも精神的にもストレスが伴うものです。極端な制限は行わず、計画的に積み上げるように行う減量が結果への一番の近道となることを心得ましょう。

統括すると、脂肪燃焼期にはまず自分の基礎代謝と活動代謝を調べます。次に試合までの日数から逆算して自分が1日の摂取カロリーを何kcalに抑える必要があるのかを把握します。次に栄養素のバランスに考慮しながら1日の食事メニューを決定します(毎食違う食品から摂取できたら理想的ですが結局は毎日同じメニューに落ち着くと思います…)

さて、脂肪燃焼期についてはこれくらいで締めさせてもらいます。その他不明点等があれば是非直接のご質問をお待ちしています。

次章ではいわゆる水抜きと呼ばれるドライアウト期について解説していこうと思います。

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