減量について 〜ドライアウト期〜
前回に引き続け減量のお話を進めていきます。
今回は試合1週間前〜計量までに行うドライアウト(水抜き)についてお話していきます。
当章ではプロの試合時でのドライアウトを中心にお話していきますが、当日計量であるアマチュア大会の際にも充分通用する知識だと思うので是非参考にしてください。
水抜きとは読んで字の如く、一時的に体内から水分を排出し試合前の計量を通過するために行う行為です。
なんとなく聞いたことがある方もいらっしゃるかとは思いますが未だに、水抜き=絶食したりサウナに籠もったり、などと認識されている人が多いと思います。
確かに一昔前の減量はそういった風潮もありましたし、私自身デビューした当初(十数年前)はそのような減量を行った記憶もあります。
こういった減量方は非常に苦しいものでしたし、試合でのパフォーマンスもかなり落ちるのが現実です。
しかしスポーツ医学も進み、減量法も日進月歩で進化し、今や科学的減量などと呼ばれるほど高度に発達した減量法が確立されつつあります。
それではまず、何kgまで水抜きを行うことができるか、ということですが試合契約体重からの割合で以下のパターンで導き出すことができます。
「契約体重の5%まで」
人間が運動パフォーマンスを失わずに行える脱水の限界。アマチュア等の当日軽量の場合でもギリギリでリカバリーが可能な範囲。
「契約体重の6〜6.5%まで」
少なからずパフォーマンスは低下するが、質の良いリカバリーを行えば回復可能な範囲。当日計量でのリカバリーは間に合わないので、計量を前日に行うプロの試合向け。
「契約体重の7.5%まで」
人間が脱水で行動不能(意識不明等により)に陥るのが約8%の脱水と言われているので、理論上意識を保ったまま行える脱水の限界点。完全回復には数日を要するため、前日計量であるプロの試合であろうと完全なリカバリーは不可能ですが、失格になるよりはマシという理由で落とすだけならギリギリ落とせる範囲。
たとえば契約体重が70kgのアマチュア選手が水抜きする場合、契約体重の5%である3.5kgまでは水抜きが可能ということになります。
もちろんこれは理想値の話ですので、パフォーマンスを低下させないという意味でなら水抜きは少ないに越したことはありませんが、それはご自身の出場する大会や試合でのスタイルによって決定してくれたらと思います。
さて、具体的なドライアウト方法に移っていきますが、簡単に説明すると人体の中で水分を貯蓄する要素を排除するということにつきます。
では何が水分を貯蓄する働きをするかと言うと、塩分とグリコーゲン(糖質)になります。
科学的減量では特殊な手法で塩分やグリコーゲンを体内から排除することにより脱水を行い、身体への負荷を最低限に抑える事を目標としています。
では塩分とグリコーゲンどちらを優先して排除するかと言うと、リカバリーのしやすさから見て塩分から排除することをオススメします。まずは塩分カットを行い、それでも脱水が足りない場合にはグリコーゲンの排除も検討していくことになります。私の主観だと6%以下の脱水までは塩分カットのみで間に合い、6%以上の脱水にはグリコーゲンのカットも必要となってくるという体感です。
今回は長くなるので塩分カットの方法のみ記載しておこうと思います。
塩分カットの具体的な手法としてウォーターローディングと呼ばれるものがあります。
試合一週間前からスタートし1日に摂取する水を、4リットル、6リットル、8リットル、10リットル、とスライドして増やしていき、その間塩分の摂取を極力(日に0.1g以下)無くしていきます。
水抜きをしたいのにそんなに大量の水を飲むの!?と思われるかもしれませんが、塩分摂取を控えた状態で大量の水分を摂取するとすでに体内にある塩分が尿とともに排出され、結果的に脱水が進みウォーターローディング期間中にも体重が減少していくことになります。
試合が日曜日だとして、その一週前の日曜日からウォーターローディングを始めたとすると水曜日がウォーターローディング最終日となり、翌日の木曜日昼過ぎにはウォーターローディング開始時と比べて1〜2kg程体重が減少していると思われます。水抜き自体は1〜2日程度あれば充分なので数日身体を休め、試合前日や計量日当日に半身浴やサウナ等で一気に体重を落していきます。
サウナの入り方等は人それぞれだと思うので言及はしませんが、ウォーターローディングのおかげで塩分がカットされているため想像以上に楽に水抜きを行えると思います。
その他の裏技としてから、入浴剤に使われるエプソムソルトと無水エタノールを入れた風呂に浸かり浸透圧による脱水で皮下水分を排出するという方法もあります。こちらもリカバリーしやすい脱水方法となりますので、ご興味ありましたら私までご質問ください。
以上が大まかなドライアウト期の水抜き方法となります。
次回は計量後のリカバリーについてお話したいと思います。